海軍大将・東郷平八郎は日露戦争特に日本海海戦で連合艦隊司令長官として
指揮をとりトーゴー・ターンというT字戦法による90度旋回航法で当時、世界最強と唄われていた
ロシアのバルチック艦隊を破って国内外で英雄になった人である。
東郷平八郎には人を唸らせる逸話が数多く残っていて
例えば
天気晴朗なれど波高し
…これは旗艦三笠からの有名な電報でありこれからの嵐を意味しているようにみえる。
皇国ノ興廃、コノ一戦ニ在リ。各員一層奮励努力セヨ
… これも三笠に掲げたZ旗につけた意味である。
ロシア海軍は白旗を掲げて降伏を表現したが東郷は砲撃を止めさせなかった。
というのは白旗を掲げたロシア艦隊は機関を停止させなかったからである。
東郷平八郎は寡黙で多くを喋らないがこれは大久保利通に仕官を願いでたときに
叶えられなかった。後に聞いたところによると大久保は「東郷は喋りすぎるからダメだ」
と言われたのを聞いてそれ以降寡黙になったということである。
さて東郷は「昔の人は勝って兜の緒を締めよと言った」とか逸話が多いのだが
意外と知られていない話がある。
それは
「100発100中の大砲1門は100発1中の大砲100門に匹敵する」
と言って砲術の正確さの励ましたということである。
これは正しいのだろうか?
一瞬そうかも知れないと思ってしまうのだが…
+------------->100発1中の大砲 №1 100発100中の大砲 | 1 門 ------------------------+------------->100発1中の大砲 №2 ロシア艦隊 | 日本海軍 : : +------------->100発1中の大砲 №100
この図で同時に一斉に射撃を開始したとする。
日本海軍の大砲は必ずロシア艦隊の大砲のどれか1 門を破壊することは確かである。
100発100中なのだから当然だろう。
ロシア艦隊はまともに当たらない大砲ばかりだが100発1中であると言えども100門もあるので
どれか1 門は日本海軍の大砲を破壊することができる。
ところで日本海軍には1 門しか大砲がないのでこの最初の勝負だけで日本には大砲がなくなる。
つまり日本の負けである。
<=旗艦三笠の甲板をイメージして作った我がペント・ハウス
つまり残念ながら東郷理論は正しくはない。
さてここからが問題であってそれでは
日本に100発100中の大砲が何門以上あれば
100発1中の大砲100門のロシア艦隊に勝つことができるだろうか?
これが問題である。
この問題は「大学への数学」という受験雑誌に掲載された
学力テスト・コンクールに出題された問題である。
当時高校生であった私が解けなかった問題である。
恥を忍んで最近に編集部にもう一度解答を教えてもらった。
編集部の人の評論では85%以上の人の回答が誤りであったということである。
知り合いの弁護士にこの問題を酒の席であるとき話してみた。
その弁護士の先生は大いに興味は示されたが解けなかった。
「ええ~と両方が発射すると空中で弾が当たって…」
「先生、そういう問題じゃないんです。」
今年は京都大学の望月教授が超何問のABC予想という難問を解いたと話題になったが
それ以前に同じ京都大学にフィールズ賞(=数学界のノーベル賞)を受賞している
森重文という現在の京都大学名誉教授がいるがこの方も当時高校生でこの問題を
解いている。(もちろん正解)
なぜわかるのかというとこの人は学力テスト・コンクールに1年間応募してすべて満点であったからである。
今日初めて知ったのだが森重文氏は名古屋出身とのことである。
当時、彼は大学への数学の学力テスト・コンクールはすべて満点なのは
家庭教師に解いてもらっているのでは?とのやっかみの投書があったが
この学力テスト・コンクールは大学生の家庭教師レベルでは解けるレベルでは
なかった。
問題は毎月6問あるのだが6問を解くのにやはり約1ケ月かかってしまう難しさである。
(私の頭が悪いと言えばそれまでだが)
この森氏は他の問題などには目もくれず学力テスト・コンクールだけを
解いていた。
4月になって京都大学の学生から森重文と書かれた自転車に乗っている人を見た、との
投書があって皆は森氏が京都大学に入学したことを知った。
(この年は東大の入試はなかった)
当時、大学への数学を執筆していた河合良一郎という教授のガイダンスがあると
聞き私も京大の友人に誘われて行ったことがあるがあの熱気に溢れた若い学生の中に
森重文氏もいたのだろう。(しかしこの友人も実は当時は20万人の中の16番目という秀才であったし
「大学への数学」の学力テスト・コンクールは喫茶店でスラスラと解いて
おまけに問題の背景まで私に説明して見せた京大医学部の学生であった。)
河合良一郎先生のガイダンスが終わると教室中に溢れた学生はスタンディング・オベーションの
拍手が鳴り止まなかった。後で振り返ればただの一回生の数列やベトル空間なんかの単なる数学の
話に過ぎなかったのだが当時の学生としては感激であったのだ。
ちなみに私はやはり「大学への数学」を執筆していた井上正雄先生(複素関数論)が教鞭を取られている大学へ
進学した。「大学への数学」の影響は大きかったのである。
さて森重文氏が学コンで満点を取り続けたことはウィキペディアにも掲載されているが私は彼の高校生のときの偉業を現実として知っている。
同じ京都大学のフィールズ賞を受賞したあの広中平祐は「自分は鈍才だが森君は天才だ」と称えている。
話はそれてしまったが100発100中のこの問題、あなたはどう解きますか?
ご参考までに弊社の中でお客さまに時々長電話をしている男がいるが
この男は15~20分くらいで解いたので難しい問題ではないのかも知れない。
でも別の京都大学出身の男はどうも解けていないようである。
私も解けなかった。
この解答はGW明けに公開の予定。高校1年生程度の学力を必要とする。
私ももう一度考えてみる。諸兄もぜひチャレンジして頂きたい。