C/400, いわゆる C言語の関数には RPG にはない、わかりやすい関数が
数多く用意されている。
IBM は、ILE-RPG の中から C/400 の関数を利用できるようにするために
バインド・ディレクトリー: QC2LE
を提供しており、
H BNDDIR('QC2LE')
のようにして H-仕様書に定義すれば ILE-RPG の中から C/400 の関数を
呼び出すことができる。
( 実際はこの指定がなくてもバインドのときに自動的に C/400 関数は
インクルードされるのだが仕様によれば、この指定が必要ということなので
あえて必要である、として紹介した。)
これらは機会があれば C/400 の関数の利用方法をいくつか紹介していく予定であるが
今回は RPG にはない、わかりやすくて使いやすい、
関数: sprintf
について解説しよう。
同時にポインターを使わないでポインター・パラメータに値を指定して渡す方法も
紹介する。
この方法は API を利用するときにかなり役に立つはずである。
多くの API のパラメータはポインターであり、そのためポインターを苦手とする
RPG 開発者にとって朗報である。
関数 sprintf とは
sprintf 関数とは書式を編集する関数である。
sprintf((結果の変数), (書式フォーマット),
代入する変数1, 代入する変数2, … )
のように定義されており例えば C/400 で記述すると
sprintf(BUFF, "<definitions name="%s" len=%d>", FIELD, LEN);
を実行すると受入れ変数 BUFF
には FIELD="CGIPARM", LEN=15
が
書式:
"<definitions name="%s" len=%d>"
に代入される。 %s
には文字列、%d
には数値が代入されるという意味である。
わかりやすくはないだろうか ?
これを ILE-RPG で書くと
【RPG ①】
/FREE EVAL BUFF= '<definitions name="' + %TRIMR(FIELD) + '" len=' - %TRIML(%CHAR(LEN)) + '>"; /END-FREE
となるはずである。
定位置記述のほうがいいという人であれば
【RPG ②】
D BEG_TAG C CONST('<definitions name="') D MID_TAG C CONST('" len=') D END_TAG C CONST('>") C BEG_TAG CAT FIELD:0 BUFF C CAT MID_TAG:0 BUFF C CAT %CHAR(LEN) BUFF C CAT END_TAG BUFF
となってしまう。( 恐らく CAT %CHAR(LEN)
はコンパイル・エラーかも? )
やはり sprintf
を使って
sprintf(BUFF, "<definitions name="%s" len=%d>", FIELD, LEN)
と書いたほうがわかりやすいのは目的とする書体がはっきり目の前に
書式: "<definitions name="%s" len=%d>"
として現れているからである。
これに対して 【RPG ①】 や 【RPG ②】 の場合は書き手はわかるかも知れないが
読み手にはわかりにくい記述である。
読み手は結果としてできあがる文字列を頭の中で想像しなければならない
からである。
PHP が作り手にとってわかっても読み手にとってわかりにくくなってしまうのと
同じである。
JSP&Servlet も読み手にとって非常にわかりにくい。
さて sprintf
を使った C言語記述のほうが見やすくわかりやすいことは
ご理解頂けたと思う。
バインド・ディレクトリー QC2LE
をバインドすれば C言語の関数も
RPG の中で使える、ということなので sprintf
も使えるということに
なるのだが実は sprintf
の %s
に代入する文字列パラメータは
文字列の最後を NULL (0x00)
で終わるポインターのパラメータである。
さらに数値として 整数: INT ( 10I 0)
を定義しても値は正しく代入されない。
もちろんこのような処理を行う方法は IBM 解説書のどこを探しても
説明はない。
【 サンプル・ソース: TESTFMT 】
0001.00 H BNDDIR('QC2LE') 0002.00 D SPRINTF PR 10I 0 EXTPROC('sprintf') 0003.00 D BUFF 32767A OPTIONS(*VARSIZE) 0004.00 D FORMAT * VALUE OPTIONS(*STRING) 0005.00 D VAR * VALUE OPTIONS(*NOPASS:*STRING:*TRIM) 0006.00 D LEN 10I 0 VALUE OPTIONS(*NOPASS) 0007.00 0008.00 D FORMAT C CONST('<definitions - 0009.00 D name="%s" len=%d>') 0010.00 D BUFF S 40A 0011.00 D FIELD S 11A 0012.00 D LEN S 10I 0 INZ(15) 0013.00 D RES S 10I 0 0014.00 D 0015.00 C MOVEL(P) 'CGIPARM' FIELD 0016.00 /FREE 0017.00 RES = sprintf(BUFF:FORMAT:FIELD:LEN); 0018.00 /END-FREE 0019.00 C MOVEL(P) BUFF DSP40 40 0020.00 C DSP40 DSPLY ANS 1 0021.00 C SETON LR
【 解説 】
非常に短いソースであるが是非覚えて欲しい重要なテクニックが収められている。
まず
H BNDDIR('QC2LE')
は、C言語の関数を利用するためのバインド・ディレクトリーの記述である。
次に
0002.00 D SPRINTF PR 10I 0 EXTPROC('sprintf') 0003.00 D BUFF 32767A OPTIONS(*VARSIZE) 0004.00 D FORMAT * VALUE OPTIONS(*STRING) 0005.00 D VAR * VALUE OPTIONS(*NOPASS:*STRING:*TRIM) 0006.00 D LEN 10I 0 VALUE OPTIONS(*NOPASS)
が非常に重要な C言語の sprintf
の関数のプロトタイプの宣言である。
SPRINTF
とは、このプログラムで使用する名前だが実際に参照するのは
EXTPROC('sprintf')
によって示されている。
受入れバッファー: BUFF
は最大のサイズまで利用できるように
D BUFF 32767A OPTIONS(*VARSIZE)
として、しかしどのような長さにも対応できるように OPTIONS(*VARSIZE)
で
指定されている。
書式フォーマットは
D FORMAT * VALUE OPTIONS(*STRING)
とあるように変数の型は C言語の言うところの 最後に NULL 文字を
ストッパーとしているポインターである。( C言語では char*
)
ここで OPTIONS(*STRING)
と指定すると sprintf
にパラメータとして渡すときに
i5/OS によって文字列の後ろに自動的に NULL 文字を
付加してくれることを意味する。
つまり、
C CAT X'00':0 FORMAT
のような演算を代わりにやってくれることを意味する。
この OPTIONS(*STRING)
は API を呼び出すときに
char*
と指定されているパラメータを
ILE-RPG で使用するときにも使うことができる。
次に sprintf
には文字列変数を
D VAR * VALUE OPTIONS(*NOPASS:*STRING:*TRIM)
と定義しており *TRIM
は変数として渡すときに自動的に前後のブランクの文字列を
トリム(除去)してくれることを意味する。
次に *NOPASS
を説明しよう。
*NOPASS
とは省略可能なパラメータであることを示す。
関数 sprintf
は
sprintf(BUFF, "<definitions name="%s" len=%d>", FIELD, LEN)
のように記述したときは FIELD
は文字変数であり、
LEN
は数値変数であったはずである。
これは変数は文字列であっても数値であっても、
どちらでも使用可という意味ではなく
sprintf
のパラメータは複数のいくつかの文字列変数のパラメータの後に続いて
数値変数のパラメータが連続して定義されている。
つまり FIELD
という定義は
FIELD
を定義してその後に続くはずの文字列変数パラメータが
省略されているということである。
従って *NOPASS
がないと LEN
も文字列変数として sprintf
に見なされてしまい
LEN
の数値が正しく sprintf
に渡されないということになる。
LEN
が正しく渡されるために VAR
には *NOPASS
を指定したのである。
また LEN
の後続を省略できることを示すために
D LEN 10I 0 VALUE OPTIONS(*NOPASS)
として LEN
にも *NOPASS
の指定が必要である。
このように指定すれば後は簡単であり
/FREE RES = sprintf(BUFF:FORMAT:FIELD:LEN); /END-FREE
によって sprintf
をわずか一行で実行することができる。
書式を
<definitions name="%s" len=%d>
で示しておいて %s
に文字列を %d
に数値を代入するという考え方は
実にシンプルでわかりやすい。
sprintf
を使えばこれまでのように CAT 命令の繰返しでは
読み手は理解しにくいものとなる。
開発言語にも特性や特質がある。
C言語に優れた関数が用意されていて
ILE-RPG はその関数をインクルードすることができるという
他の言語にはない利点があるのだから大いに利用すべきだろう。
これによって洗練されたわかりやすいソースになることは間違いない。