実行環境

108. IPP とは

IPP とはインターネット印刷プロトコルという意味であり、
TCP/IP 通信上で使用される印刷のためのプロトコル(通信手順)である。
先に LPR (= Line PRinter daemon protocol)を紹介したので
LPR 印刷で十分ではないだろうか?
確かに LPR を使えば IBM i から、ネットワーク・プリンタに
印刷することができる。
単に汎用用紙などに印刷出力するのであれば LPR 印刷で十分であるが
用紙サイズや印刷方向、部数や両面印刷などは LPR では
指定することはできない。
LPR/LPD は UNIX で公示されてから随分時間が経っているが
最近のネットワーク印刷技術となると IPP である。
IPP とは「インターネット印刷プロトコル」という意味であり
その名が示すように TCP/IP 通信はもちろんのこと
HTTP プロトコルでの印刷データの送/受信をサポートするプロトコルである。

LPR に比べて IPP の利点は用紙サイズや印刷方向、部数や両面印刷などの
かなり細かな印刷の制御ができるだけでなく
プリンタの属性や能力の問合せ、印刷状況、印刷結果などの情報を
取得することができる。
LPR がとにもかくにもネットワーク・プリンタで印刷するための
最低限の必要な機能を実現したことに加えて IPP は実用レベルでの
十分機能まで備えたという点で企業法人での利用が普及していくことが
予想される。

複合機と IPP

ほとんどの市販の複合機やネット・ワーク・プリンタでも IPP をサポートしており
IPP サーバー・デーモンが組み込まれているので利用することができる。
ただし LPD は、多くの複合機やプリンタでも起動済みであるが
IPP サーバーは手動での起動が必要な場合がある。
複合機などの設定画面で簡単に IPP サーバーを起動させることができる。
ただし IPP サーバーを起動すると複合機の再起動が必要となる。

複合機の IPP サーバーの起動の方法はこちらで。

Windows と IPP

Windows でも IPP は既に多く利用されている。
Windows ネットワーク環境でプリンタの共有は IPP が利用される。
Windows が IPP クライアントとなって自分の印刷データを
IPP デーモンが起動されている共有のネットワーク・プリンタに
スプールを送信するのである。

【参考】 Windows7/Vista の IPP ポートで印刷する
http://www.iodata.jp/lib/manual/etg-dsus-hs-h05/htm/print-vista_ipp.htm

IBM i と IPP

さてわれらが IBM i も IPP には十分関わりがある。
IBM が IPP を Knowledge Center に掲載しているのは

IBM Knowledge Center
https://www.ibm.com/support/knowledgecenter/ja/ssw_i5_54/rzalu/rzalutcpipp.htm

である。
よく読んでみると残念ながら我々の期待とは逆であり
IBM i の中で IPP サーバーを起動してネットワークの Windows クライアントの
印刷を IBM i から 5577系のドット・インパクト・プリンタに印刷するという
手法について解説されている。
元より STRTCPSVR コマンドでオプション *IPP が用意されていないのは
IPP が HTTP プロトコルであるので Apache さえ起動していればよいということになる。

それにしても Windows の印刷要求をわざわざ 5577系プリンタで印刷しなくても
良いのではないだろうか?
私達の興味は IBM i の印刷をネット・ワークの ASCII プリンタに印刷することなのだが
IBM i がその方法を提供すると 5577系プリンタが売れなくなってしまうので
IBM i には IPP クライアントを用意しなかったのであろう。

Spool ライターと IPP

IBM i に IPP クライアントを実装するのはやさしいことではない。
IPP の仕様は RFC 規格で RFC2911 や RFC2910 で公示されているというものの
これはあくまで規格であって IPP 通信のサンプル・ソース・コードや
具体的なソースはインターネットの世界でも見つからない。
プリンタ・メーカーの開発者は知っているだろうが
IBM i 上での IPP 通信となると資料もサンプルも IBM からの情報も
全く存在していない。

㈱オフィスクアトロでは RFC2911、 RFC2910 に基づいて IPP 通信による
ネットワーク・プリンタへの印刷を成功させた。
近日中には製品化を実現する見込みである。

IPP が IBM i の印刷に組み込まれると IBM i の印刷革命となる。
5577系のプリンタがかなりの部分で不要となってしまうからである。
複合機ならどのオフィスにでも存在する。
プリンタは複合機で十分な時代がすぐそこに来ている。
それを可能にするのが IPP の技術である。