V3R1M0 で IBM が発表したIFS ( Intergated File System ) は UNIX との互換ファイル、
つまり Windows や LINUX , UNIX で扱われている一般的なストリーム・ファイルを
保管するためのシステムであり、もう既にご存知の方も多いはずである。
ところが RPG プログラムで IFS ストリーム・ファイルを扱うとなると
C言語のランタイム・ライブラリー( QC2LE
) で公開されている関数(プロシージャー)を利用する必要がある。
従って C言語に精通していない人(= RPGプログラマーの大半の人) は容易に
QC2LE
を扱うことができないので、どうしても RPG による IFS 開発は敷居が高いものになってしまう。
米国誌では Scott Klement 氏が開発したライブラリーをダウンロードして利用することを
勧めているが、この方法も一般的ではない。
そこでこのシリーズでは本来ある System i の OS の機能を使って RPG による IFS 開発の
手法と原理を解説することとする。
Step by Step で進めて行くことになる。
最初の入門は IFS ストリーム・ファイルをオープンして、クローズするだけの簡単なものから始めよう。
IFS ファィル : /A001/TEST.TXT
というテキスト・ファイルをオープンするだけの簡単な例を次に紹介する。
------------------------------------------------------------------------------------------- 0001.00 H DATEDIT(*YMD/) BNDDIR('QC2LE') 0002.00 F********** IFS のオープン ******************************************** 0003.00 F* 0004.00 F* COMIPLE: 0005.00 F* CRTRPGMOD QTEMP/TESTIFS SRCFILE(MYSRCLIB/QRPGLESRC) AUT*ALL) 0006.00 F* CRTPGM MYLIB/TESTIFS MODULE(QTEMP/TESTIFS) ACTGRP(*NEW) AUT(*ALL) 0007.00 F* 0008.00 F********************************************************************** 0009.00 D FD S 10I 0 0010.00 0011.00 D OPEN_ PR 10I 0 EXTPROC('open') 0012.00 D PATH * VALUE 0013.00 D FLAG 10I 0 VALUE 0014.00 D MODE 10I 0 VALUE OPTIONS(*NOPASS) 0015.00 D CODEPAGE 10I 0 VALUE OPTIONS(*NOPASS) 0016.00 D TOPAGE 10I 0 VALUE OPTIONS(*NOPASS) 0017.00 0018.00 D CLOSE_ PR EXTPROC('close') 0019.00 D FILEID 10I 0 VALUE 0020.00 0021.00 D TRUE S 10I 0 INZ(0) 0022.00 D FALSE S 10I 0 INZ(-1) 0023.00 D PERROR_ PR EXTPROC('perror') 0024.00 D STR * VALUE 0025.00 0026.00 D O_RDONLY S 10I 0 INZ(1) 0027.00 D PATH S 14A INZ('/A001/TEST.TXT') 0028.00 D MSG S 80A INZ(' オープン・エラーです ') 0029.00 D SUCCESS S 80A INZ(' 読取り成功です ') 0030.00 0031.00 /FREE 0032.00 FD = OPEN_(%ADDR(PATH): O_RDONLY); 0033.00 IF (FD < 0); 0034.00 PERROR_(%ADDR(MSG)); 0035.00 RETURN; 0036.00 ELSE; 0037.00 PERROR_(%ADDR(SUCCESS)); 0038.00 ENDIF; 0039.00 CLOSE_(FD); 0040.00 *INLR = *ON; 0041.00 /END-FREE -------------------------------------------------------------------------------------------
最初に 0001.00 H DATEDIT(*YMD/) BNDDIR('QC2LE')
の 「BNDDIR('QC2LE')
」とは
C言語のランタイム・ライブラリーをコンパイル時にバインドするために バインド・ディレクリー QC2LE
を
バインドすることを宣言している。
次に BNDDIR
を使用しているために CRTBNDRPG
によるコンパイルはできないので
CRTRPGOD + CRTPGM
によるコンパイルをすることを
0004.00 F* COMIPLE: 0005.00 F* CRTRPGMOD QTEMP/TESTIFS SRCFILE(MYSRCLIB/QRPGLESRC) AUT*ALL) 0006.00 F* CRTPGM MYLIB/TESTIFS MODULE(QTEMP/TESTIFS) ACTGRP(*NEW) AUT(*ALL)
によって指示している。ACTGRP(*NO)
も忘れずに指定しておかないとプログラムが
メモリ内に残ってしまうので注意が必要である。
0009.00 D FD S 10I 0
とは、ファイル記述子と呼ばれるオープンしたファイルを識別するための識別子である。
ファイル記述子は open
関数(プロシージャー) によってオープンが成功すれば結果の値として生成される。
open
関数(プロシージャー) のプロトタイプは
0011.00 D OPEN_ PR 10I 0 EXTPROC('open') 0012.00 D PATH * VALUE 0013.00 D FLAG 10I 0 VALUE 0014.00 D MODE 10I 0 VALUE OPTIONS(*NOPASS) 0015.00 D CODEPAGE 10I 0 VALUE OPTIONS(*NOPASS) 0016.00 D TOPAGE 10I 0 VALUE OPTIONS(*NOPASS)
として定義されている。
open
関数は システム API 解説書の中では次のように紹介されている。
------- 構文 --------------------------------------------------------------- #include <fcntrl.h> int open(const char* path, int oflag, ...);
path (入力)
オープンするファイルの NULL
終了パス名を指すポインター。
oflag (入力)
オープンするファイルのファイル状況フラッグおよびファイル・アクセス・モード。
mode (入力)
mode_t
タイプの任意指定の 3番目のパラメータ。
O_CREAT
フラグが設定され場合に必要になります
codepage (入力)
unsigned int
タイプの任意選択の 4番目のパラメータ。
OCODEPAGE
フラグが設定される場合に必要になります。
このパラメータは、次のいずれかまたは両方を指定します。
path
で解説されている「NULL 終了パス名を指すポインター」とは char*
のことであり C言語でいう
char*
とは文字列が NULL (0x00)
で終わっている文字列のポインターのことである。
これを RPG で表現すると例えば、
%ADDR(PATH)
のような記述となる。( PATH の最後には NULL が付加されているものとする。)
次に oflag
(入力)で説明されているファイル・アクセス・モードとは、このファイルを作成するのか
または単に読み取りモードで開くのか、あるいは存在していなければ強制的に作成するのか、
などを示すパラメータである。
oflag
(入力)には様々なオプションを指定することができるようになっているが各オプションは
0013.00 D FLAG 10I 0 VALUE
でわかるように整数値(int
) である。
さらにオプションは
0026.00 D O_RDONLY S 10I 0 INZ(1)
のように O_RDONLY
(読取り専用でオープン) の値は 1 という固定値( INZ(1)
) であるが
O_RDONLY 以外にも
D O_CREAT S 10I 0 INZ(8) D O_TRUNC S 10I 0 INZ(64) D O_CCSID S 10I 0 INZ(32) D O_WRONLY S 10I 0 INZ(2) D S_IWUSR S 10I 0 INZ(128) D S_IRUSR S 10I 0 INZ(256)
のようなオプションがあるが、これらを OR
で結合したとしても 2進数上ではビットが
重ならないような値として設定されている。
mode
(入力) は oflag
(入力) に O_CREAT
(作成) が指定されたときに指定が必要であるが
0014.00 D MODE 10I 0 VALUE OPTIONS(*NOPASS)
の OPTIONS(*NOPASS)
が示しているように省略可能なパラメータである。
codepage
(入力) は oflag
(入力) に O_CODEPAGE
(コード・ページ) が指定されたときに
指定が必要である。コード・ページ とは CCSID を示す言語コードの値であり
Shift_JIS のコード・ページ 943 UTF-8 のコード・ページ 1028
が基本的なものとして覚えておいてよいだろう。
IFS ストリーム・ファイルのコード・ページは WRKLNK
の「8= 属性の表示」で確認することができる。
次に close関数は
0018.00 D CLOSE_ PR EXTPROC('close') 0019.00 D FILEID 10I 0 VALUE
によって示されているようにファイル識別子を使ってファイルをクローズする関数である。
ようやく演算命令の説明に入るのだが、この TESTOPN
という RPG はフリー・フォーマットとして記述している。
フリー・フォーマットとは
/FREE : --(フリー・フォーマット)-- : /END-FREE
として記述することができ、従来の RPG のように桁位置に制約はなく自由に記述することができる。
日本国内ではフリー・フォーマットの普及は少ないが、米国誌のサンプル・ソースは
100% フリー・フォーマットで記述されている。
ここでフリー・フォーマットで記述を紹介した理由は米国誌へ習えという意味ではなく C言語の関数を
利用する場合にはフリー・フォーマットのほうが C言語に近く自然であり、記述も少なくて済むように
なるからである。固定フォーマットでC関数を記述すると、かなり長くて見づらいソースになってしまう。
そこであえてフリー・フォーマットのソースとした。
フリー・フォーマットの場合は C言語と同じように文末は「;
」 (セミコロン)で終了する必要がある。
0032.00 FD = OPEN_(%ADDR(PATH): O_RDONLY);
は C言語では
fd = open(path, O_RDONLY);
と記述することができる。どうだろうか? フリー・フォーマットは C言語に実によく似ている。
open
関数が成功すると結果の値としての FD
には正の値が戻るがエラーの場合は FD は負の値となる。
そこで
0023.00 D PERROR_ PR EXTPROC('perror') 0024.00 D STR * VALUE : 0028.00 D MSG S 80A INZ(' オープン・エラーです ') : 0033.00 IF (FD < 0); 0034.00 PERROR_(%ADDR(MSG)); 0035.00 RETURN;
のようにして perror
関数を使ってエラーメッセージを出力している。
C 言語であれば
perror("オープン・エラーです");
と記述するところである。この perror
という C言語の関数は C言語ではよく利用される
エラー・メッセージを出力かるための関数である。
プログラムが指定した「オープン・エラーです」という文字列だけでなくシステムが
エラー・メッセージを併せて出力するので真のエラーの原因を追究することができるようになる。
ただし perror によるシステムのエラー・メッセージは System i で提供されている CPF メッセージのような
詳細なものではない。
最後にこの TESTOPN
を実行すると次のようにメッセージされる。
------------------------------------------------------------------------------ 読取り成功です : エラーはありません。 実行キーを押して端末セッションを終了してください。 ------------------------------------------------------------------------------
ファイルのオープンするだけの簡単なサンプルを紹介したが RPG による
IFS ストリーム・ファイルの操作の基本は理解して頂けたはずである。